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【書評】異邦人/原田マハ〜「京都」と「美術」と「圧倒的な物語」に僕は胸ぐらを掴まれ、ガクガクと揺さぶられた。

異邦人/原田マハ

こんにちは、

スタジオ・カミックス管理人のカーミー@StudioKamixです。

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原田マハさんの「異邦人(いりびと)」を読みました。

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初めての「原田マハ」さんの本でしたが、

物語に圧倒されてしまい、すごい勢いで読んでしまいました(笑)

この「読ませ力」、すごいなぁ・・・と

読了後はしばらく放心。

小説の舞台である京都のことや、

小説のテーマの一つである美術のことや、

個性が際立つ登場人物のことを

ついつい考えてしまって、

小説の中の世界にどっぷりと浸かり込みました。

東日本大震災直後の物語

この物語は、

画廊の専務である夫と

美術館の副館長である妻の二人の視点ではじまります。

東日本大震災直後のお話で、

妊娠した妻を放射能の心配から遠ざけるために

東京から京都へ移したことから物語は進んでいきます。

異邦人/原田マハ

京都の見えない結界

実は、僕は前々から京都に興味があって

時々訪れることもあるのですが、

京都という街の奥深さというか・・・、

観光客をはじめ多くの他者を受け入れている様で、

実はまったくもって受け入れていない排他性というか、

京都の「見えないしきたり」というか

「空気感」の正体を知りたいと思っていました。

 

原田マハさんのこの小説は「京都」が舞台ということも

この小説を選んだ決め手になった。

結果、この小説を読んで

京都の成り立ちというか、見えないけども確実に京都を形づくっている

人々の繋がりや矜恃、暗黙のルール、

そういったものを感じ取る事ができました。

 

感じ取れたとは云っても、おそらくそれは僅かなのでしょう、

その秘密の入り口のさらに手前ほどに立った程度のことだとは思いますが、

東京や大阪、或いはその他の大都市やもちろん地方とは

全くもって異なる独自性をもった京都の見えない「結界」の様なものを

垣間見る事ができました。

 

こう書くと、なんだか難しい厄介なものの様に聞こえますが、

それは、決して厄介なものではなく

とても貴重なもので、1000年以上の歴史が紡いできた結晶だと思う。

例えば、僕が今から京都に引っ越して

死ぬまで京都で暮らしたとしても

よほどの出会いでもない限りは、その結界の中に入るのは出来ないでしょう。

京都に居ながらにして本当の京都には入れていないって事ですよね。

この小説の中ではそういった京都の見えない結界の成り立ちや

その結界の中に入っていく様や、入れない様が描かれていて

とても興味深いですね。

異邦人/原田マハ

美術の奥深さ

この小説のもう一つのテーマが「美術」でした。

僕は知らずに読んでましたが、

著者である原田マハさんは、もともと美術業界の方だったんですね。

美術関連の描写がとてもリアルだったので

読んでいる途中に、取材をされたのかな?と思ったけど

身を以て体験された事が骨子となっていたんですね。

 

なので、美術に関する描写もとても骨太で

小説内に出てくる作品を「観たい!」と渇望するほどでした。

特に観たいと思った作品は

主人公である菜穂の運命を大きく動かす作品、「青葉」

京都の画廊の奥にある応接室に飾られた、この小さな絵に

菜穂が心を奪われてからこの物語は大きくうねり始める。

おそらくは実在しない、この作品を是非観てみたいなぁと思った次第。

 

たまに美術館や展覧会などを訪れることもありますが、

そんなに絵を観たいと思うコトが多くない僕は、

小説の中に広がる美術の世界を目の当たりにして

「美術」ってその絵を楽しむことはもちろんのコト、

その画家のコトや画家を取り巻く人生、歴史背景、

その作品を所有する人や関わる人といった

色んなコトをひっくるめたものが作品になるのだな・・・

と考えをあらためた。

 

作中にはゴッホやモネなど、誰もが知る様な画家の絵が登場したりもする。

美術にも造詣が浅い僕としては興味津々の内容、

美術業界のほとりにも立つ事ができて、

美術に触れる事や所有する事にもものすごく興味が湧いた。

何よりも優れた人物描写とストーリー

この小説は京都のことや美術のことがちりばめられていて

それだけでもとても興味深いお話なのですが、

実は登場人物やストーリーがそれ以上に楽しめる作品です。

 

原田マハさんによって描かれる登場人物は

小説が終わる頃には既知の友人・知人の様な近しさを覚えて

ふと気づくと、登場人物の一人の事に想いを馳せたり・・・

心配したり・・・なんてコトが多くありました。

感情を揺さぶる出来事やその心理描写に

文字どおり心を鷲づかみにされ翻弄されました。

 

後半の意外な展開は、まるでサスペンスか?

と思わせる様な意外性とスピードで、

強烈に物語に引き込まれた僕には

最後まで一気読みする選択肢しかありませんでした。

おかげで、その週末は「異邦人」に費やして終わったほどです(笑)

異邦人/原田マハ

人の世の儚さ

遠くて近きもの。極楽。舟の道。人のなか。

小説の最後のシーンで、

枕草子の一節が物語の最後に引用されています。

まさに、この物語を象徴するかの様なこの言葉が

京都に拒まれ京都から去ろうとする

主人公の一人である菜穂の夫、一輝の頭に思い浮かぶ様子は

なんとも云えず、物悲しくて切なく、

人の世の儚さが染み入るように心を打ちました。

「諸行無常」と云うやつでしょうか・・・(苦笑)

初めて読んだ原田マハさんの小説。

約360ページで、これだけの世界観と物語を

読者の眼前につきつける原田マハさん、

もはやその筆の力は「魔法」ですね。

小説から距離を置き気味だった僕の「小説腹」を

大いに刺激してくれた圧倒的な作品、

そして、京都や美術に関する知識欲をも刺激されて

大満足の一冊でした。

しばらくマハさんにはまりそうです。

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ドラマにもなってたんでしょうか?

見てみたいものです。

▼参考リンク

連続ドラマW いりびと-異邦人

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